Column コラム

【PR解体"信書" to ワタナベ】
Vol.2「コミュニケーションの基礎体力」

2010.06.04

ワタナベよ 『話す』『聴く』『書く』『読む』4拍子揃ったいい選手になれ!


僕のツイッターのプロフィールには、「『しゃべること』『書くこと』『聴くこと』が仕事です」とあります。
僕はコミュニケーションを追求することが自分の商売だと思っていますし、生身のコミュニケーションそのものが仕事になっていけばいいなとも思っています。

「人を動かす『文章術』」(PHPビジネス文書)の著者の川辺秀美さんは、著書の中で『話す』『聴く』『書く』に『読む』を加えて、4つの要素がコミュニケーションを構成するとしています。
4つはバラバラにあるのではなく、連携・組み合せで力を発揮するので、自分の得意不得意や組み合わせのパターンを知る必要があると書いています。
対面コミュニケーションでの『話す』『聴く(聴き取る)』、書面コミュニケーションでの『書く』『読む(読み取る)』というスキルを磨くことが、コミュニケーションに対する感覚や総合力を高めることは間違いないでしょう。(デジタル・コミュニケーションを含めても、この基礎体力は変わらないはずです。)

ということで「PR解体"信書" to ワタナベ」、今回のテーマは『話す』『聴く』『書く』『読む』というコミュニケーションの基礎体力についてしゃべります。

さて、ワタナベに質問。
「ワタナベはどれが得意?どれが不得意?」
「えっ、考えたこともなかった?...そうか、じゃあ、いま考えろ!」(苦い顔をするなって)。

じゃあ、僕の恥ずかしい過去から話をはじめるけど、僕は高校までは真剣に野球しながら、将来は噺家(落語家)になろうと考えていた。
噺家志望の高校球児。
野球弱そうって、失礼な。
中学生の頃から、毎日、風呂に入りながら、歌を歌うように一人で落語を喋ってた。
なので、自分では『話す』が得意で、逆に『聴く』が不得意だと思っている。
ただし、"得意"にこそ落とし穴があるからな、最近はあんまり調子に乗って喋らないようにしている。
噺家じゃないからね。

よく野球では『走』『攻』『守』3拍子揃ったいい選手って言うけど、コミュニケーションの4つの要素は、それ以上に絡み合っている。
書くためには読めなきゃいけないし、喋れない人は聴き取ることも上手くない。
多少の得意、不得意があったとしても、最後はバランスと総合力やと思う。

そもそも日常のコミュニケーションは"無意識"のことが多い。
ワタナベも、これまで自分の考えや望みを自然体で家族や友達に伝えてきたはずだ。
それは意志疎通の前提として「家族関係」「友人関係」ができあがっているし、そういう親しい間柄では複雑な問題をやりとりすることも少ないから。
日常会話で、構成やシナリオを考えて喋っている人は少ないよね。
但し「恋愛関係」だけは別な、超意識的なコミュニケーションになる。

一方で、ビジネスのコミュニケーションは、前提となる関係性がないところから話をはじめることも珍しくない。
ビジネスの前提にあるのは「利害関係」だから厄介だ。
だからワタナベのような新入社員やキャリアの浅い人たちは、上司から「文章が書けない」「まともに喋れない」「人の話聞いとんのか」「資料のどこ読んできたんだ」と叱られるわけだ。
"意識・意図のある"コミュニケーションに慣れていないし、経験も足りない。
だからこそ学ぶ必要もある。

今回は『話す』『聴く』『書く』『読む』それぞれの実践の前に、まず4つの基礎体力に共通するコミュニケーション上の"意識"や"意図"について話そうと思う。

4つの基礎に共通する第一歩は、「誰と誰のコミュニケーションなのか」をはっきりとさせること。
「私は誰?あなたは誰?」。
バカみたいに聞こえるけど、意外にこの大前提が曖昧なままコミュニケーションをはじめているケースがある。
ワタナベ、自分の立場を明確に説明せずに、いきなり話を切り出したりしてないか?
あなたは、あなたをよく知っているけど、相手はあなたを知らないのが当たり前。
一方的な思い込みを前提にコミュニケーションをはじめないこと。
1つ目の意識は、「主体を明らかに!私は誰?あなたは誰?」だ。

次に、『話す』にしろ『書く』にしろ、その中身、シナリオを考える。
シナリオを描く前提となるのが「コミュニケーションの目的を明らかにする」ことだ。
ドラマや映画の脚本なら、最初からネタがばれないように、紆余曲折の末にクライマックスをもってくるかもしれない。
でも、ビジネス・コミュニケーションのシナリオで一番大事なポイントは、目的(意図や結論)をできるだけシンプルに、早く伝えることだと思う。
相手に「なぜ私はあなたに働きかけているのか」「私はあなたに何をして欲しいのか」を簡潔に最初に伝える。
尻切れトンボでも構わない。
前段ばかりが長くなって、相手が焦れて聞かなくなる、読まなくなるのを避けることの方が重要だ。
2つの目の意識は、「言いたいこと(書きたいこと)を明らかにして、かつ早く伝える」だ。

この2つの意識は、コミュニケーションを構成する最低限の枠組みをつくることにつながる確認事項だ。
言い換えれば、この2つのポイントが明らかであれば、なんとか枠組みだけは成立する。
受け手からすると、「楽しい」「興味深い」話であるかどうかは次の段階になる。
まずは意味がわかるし、意図は伝わる。
逆にこの2つを外すと、受け手は「苦痛」だし、「不愉快」にもなる。
余談だけど、会議の仕切りの善し悪しは、この枠組みの作り方にかかっている。
冒頭のアジェンダで、「今日の会議は何のためのものか」「どんな順番でどんな話し合いをするのか」を示すことができるかが問われる。
枠組みや道筋が見えなければコミュニケーションは迷走する。

反対に『聴く』『読む』の立場になっても、この構造は変わらない。
ワタナベ、自分が「聴き取る」「読み取る」立場になったら、この2つの意識で、相手のおしゃべりや文章からコミュニケーションの構造を抜き取れ。
迷走しそうな話や混乱気味の文章から上手く枠組みをつくっていくのもプロの仕事だ。

枠組みができれば、その上に、意図を加えていくことができる。
相手との関係や場の雰囲気、引き出したい反応から逆算でコミュニケーションに味付け、演習をする。
基本的な演出として、スピーチなら、立って喋るのか、座って喋るのか。
文章なら、「ですます調」「である調」「口語調」どれでいくのか。
タイトルやリードの付け方も重要だ。
フランクで親しみやすい雰囲気を出すのか、生真面目な姿勢で臨むのか。

気をつけて欲しいのは、ビジネス・コミュニケーションで過度の演出は逆効果だと思う。
特にワタナベのような新人は、受け手が「聴きやすい」「読みやすい」ことを大事にすればいい。
「~やすい(ノンストレス)」「気持ちよく」が最初で最大の意図だ。

「お時間はどのくらい大丈夫ですか?」「わかりました15分でお話します。そのあと残り15分で協議をさせてください」
「このお手紙では、まず結論を最初に書くことにします。もし興味をもっていただければ、そのあとの3つの理由、根拠の部分にも目を通していただければうれしいです。」
「今日はキチンとネクタイをして、直立不動で、自己紹介だけを済ませよう。」

すべては、「~やすい(ノンストレス)」「気持ちよく」コミュニケーションのためだ。
ここまでできるようになれば、あとは中身次第、コンテンツ勝負に持ち込める。
意図の込め方はいろいろある、個性があった方がいい。
自分なりに試してみればいい。

1つの例として、「コトバのあそび」について説明しておくね。
例えば、この文章のタイトルは「PR解体"信書"」だよね。
本来なら「解体新書」だけど、ワタナベへの「信書」と、もじったわけだ。(こうやって説明をするのは恥ずかしいなあ。)
キャッチコピーでも、タイトルでも、自己紹介のキャッチフレーズでも何でもいい。
コトバで遊べるようになればいろんな場面で使えるようになる。
コトバのリズムや響き、韻を踏んだり、表記で遊ぶこともできる。
コトバあそびに敏感になろう。

最後にもう一つ大事なことを付け加えておきます。
それは"時間"と"文字数"の感覚。
コミュニケーションには必ず物理的な制限がつきまとう。
5分で話すのか、30分で話すのか。
200文字でまとめるのか、1000文字でまとめるのか。
ここでの意図は「時間と文字数を使いこなせ!」だ。
ワタナベ、最初からは、使いこなせなくても、「文字数」「時間」を常に意識しろ。
ちなみに、このブログで、約3800文字だよ。

ワタナベ、ここまでの「コミュニケーションの基礎体力『話す』『聴く』『書く』『読む』」は、実はビジネスマンなら皆に共通する話だよな。
銀行員でも、メーカーの人でも、サービス業でも、みんなにあてはまるはずだ。
だから、この機会に友達にも、このブログ紹介しとけ。(あれっ、また苦い顔して)

ワタナベへ質問。
僕らはコミュニケーションのプロだよな。
僕らは、他の業界に勤める人とどこが違うかわかるか?
...その通り、僕らはプロとして、他人(他社)のコミュニケーションをサポートすることを仕事にしている。
だからこそプロとして、誰よりも4つの基礎体力を鍛える必要があるんだよ。


最後に参考図書をまとめるから読んどいてね。
コミュニケーションの指南書は書店にもたくさん並んでいるけど、目的を明確にした書籍の方が参考になると思います。

川辺秀美 「人を動かす『文章術』」(PHPビジネス文書)
鶴野充茂「頭のいい説明「すぐできる」コツ―今日、結果が出る!」(三笠書房)
菅野夕霧 「ヤフートピックスを狙え」(新潮新書)
萩原千史 「限られた予算で売上も知名度も好感度もアップするPRの教科書」(ディスカヴァー)

20100604