Column コラム

【PR解体"信書" to ワタナベ】
Vol.1「PRの木の話」

2010.05.26

この春、うち(インテグレート)のPR部門に入ってきた1年生はたった一人、ワタナベさん(女性)です。
少数精鋭の極みですね。

ちょうど今頃は、いろんな会社で新人たちが「研修」を終えて「現場」へとデビューをする時期ですよね。
うちの1年生のワタナベ宛ての「信書」として、PRついてしゃべろうと思います。
題して、「PR解体"信書"toワタナベ」です。

僕自身がいままで「PR」の仕事をしてきて感じてきたのは、「PR」の捉え方は、人によってずいぶん違う、「PRって仕事はかなり曖昧だな」ということです。
だから、ワタナベはこれからきっと、いろんな人のPR論を聞くことになるかもしれません。

ちなみに、日本のPR業界で「PR」という言葉を正面からきちんと定義しようとした先輩として、
井之上PRの井之上喬さんがいます。
ワタナベ、知っているか?
昔からいろんなPRの本が出ているけど、『PR』という概念をしっかりと規定してから、話をはじめようというスタンスに立っているは井之上さんぐらいじゃないかな。

井之上PRのサイトには、
「パブリック・リレーションズ(PR)とは、個人や組織体が最短距離で目標や目的に達する、『倫理観』に支えられた『双方向性コミュニケーション』と『自己修正』をベースとしたリレーションズ活動である」
と書いてある。
井之上さんの「パブリック・リレーションズ―最短距離で目標を達成する戦略広報」は目を通しておくように。
但し2500円の本だから、買ってもいいけど会社のライブラリーを利用すればいいよ。

なんで井之上さんの話を持ち出したかというと、井之上さんの定義は「PR」を概念的に規定したものだと思う。
哲学と広報学からの規定だと言える。
一方でこの信書では、僕なりに「PR」という仕事を、"今の"マーケティングやメディア環境や社会問題から捉えてワタナベに伝えてみようと思う。
「実在」「実践」からの規定って感じかな。

「苦い顔」すんな。大丈夫、わかりやすく説明するから。


見ろ、ワタナベ、これが「PR(ピーアールの木)」だ!


20100526-thumb-200x244-42 わかるか。これがPRの全体像、名付けて「PRの木」。

仕事の木は、大きくは3つの部分でできている。
まず根幹(コンカン)、そのコトバの通り、「根っこ」と「幹」な。
その上で、「枝葉があって、花や実」がなっている。
これが仕事の木の構造な。
PR以外でも、仕事はこの3つの部分で構成されているとも思うけどね。

で、PRの木の「根っこ」について。
地面の下、PRの根底にあるのは「社会」「公共」に通じる広聴・広報活動な。 情報の"社会化""組織化"に関わる活動。
あのな「環境問題」や「政党PR」を担当しているから、社会や公共につながっているということではないんだよ。
シャンプーや洗剤のような日用品のPRを担当していても、クルマのPRを担当していても、PRの根っこは変わらない。
僕らはいつも、世論、ジャーナリズムと向き合っている。
PRっていう仕事は、不特定多数の一般市民の「合意形成」に関与するわけだ。
大袈裟ではなく、世論に影響を与えるわけだ。
カッコよく言えば「ソーシャル・コミュニケーション・デザイン」、勘違いすると「世論操作」にもなる。
PRの根っこには、情報を公に取り扱うという責任が横たわっている。
よく若いPRマンが「パブリックなテーマ、社会的に意義のある仕事をやりたいです!!」って言うのを聞くけど、そんな簡単に根っこに関わる仕事ができないよ。
むずかしいよ。本当に根っこから仕事をつくっていくのは。
いまはカッコのいい「ソーシャル・コミュニケーション」を真似るよりも、カッコ悪くてもいいから、泥んこになって商品PRに取り組め。

次に、PRの木の「幹」はなんだと思う?
ワタナベどう思う。
なるほど、「メディアの人との関係」な、確かにそれもある。
でも、それは、このあとの枝葉と実の話に近いかな。
僕はPRの幹は、複数のステークホルダーとの関係づくりやと思う。
あれ、また「苦い顔」して...。
「ステークホルダー」は利害関係者という意味な。
つまり、いろんな立場の人と関係づくりということだよ。
これは実際、仕事で体験しないとピンとこないかもしれないけど、具体的には、いろんな人や会社、団体と会って話をして、交渉して、枠組みをつくったり、場を設定したりする仕事。
これを何回も経験していくうちに、ある一つのテーマの元に「n to n(多数対多数)のコミュニケーション」をデザインする感覚がわかってくる。
PRというと企業(クライアント)→マスコミ→消費者という単純な情報伝達の中で仕事を捉えている人が意外と多い。
ワタナベ、間違っても、企業とマスコミの間をつなぐ仕事だと、そういう狭い解釈に陥るな。
もちろん、ワタナベの言う通り、マスコミとの関係はPRパーソンにとって重要だよ。
でもな、少なくともそれはこの仕事の幹ではない!と思うよ。

最後に「枝葉と花や実」の話な、木を眺めると、目に入るのは「枝葉と花や実」だよね。
だから、PRの木も、マスコミとの関係、記者発表会、芸能の囲み取材、セレブリティへのインタビュー、大々的なPRイベント...が目立つよね。
でもそれは、「枝葉」「花」「実」だよね。
でも、それを"枝葉末節"とは思わないでね。
「花」も「実」もない仕事が味気ないし、何よりも根と幹だけじゃビジネスにはならないからね。

ワタナベ、いま毎日、リスト整備して、リリース書いて、テレビ局、新聞社に情報持ち込んでいるだろ。
「何よこの単純作業」「アポ取りの電話がつらいなあ」とか思ってないか。
これからはクライアントにも叱られるし、メディアにもどやされたりもするぞ。
でもな、そのうち、幹がしっかりしてきて、根っこが張れるようになるからね。
5年目の先輩を見てみろ、幹の仕事にチャレンジしてるはずだよ。
10年目先輩と話をしてごらん、幹から根っこの話をしてくれるはずだから。

ワタナベ、大事なことは、大きな木の中で、目の前の自分の仕事にしっかり取り組むことだよ。