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【The対談 Vol.04】
次世代のPRを語る (後篇)−PRを牽引する人材像

2010.09.06
前回に引き続き ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役社長 本田 哲也氏をお招きし、PR業界の人材についてお話を伺いました。

本田 哲也

ブルーカレント・ジャパン株式会社
代表取締役社長

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山田 まさる

株式会社インテグレートCOO

【The対談 Vol.04】 次世代のPRを語る (後篇)−PRを牽引する人材像

山田:前回はPRの発想がもっと顕在化していくためには、ビジネスの本質をとらえた成功例、「作品」を世の中に出していかなくてはならないというお話でした。今回は、そういう仕事を担ってもらう人材のお話です。
さて、本田さん、PR業界に人は入ってきているんでしょうか?どう感じていらっしゃいますか?

本田:色々聞く中では、流入してきていると感じますね。それは、仕事として顕在化してきたということがあると思うんですけれど。
まず、新卒からの流れっていうのは確実に増えていると思います。昔はこういう仕事をしたいと思ったときに、皆さん電通・博報堂に代表されるいわゆる「総合広告代理店」に入社するっていう考え方だったと思うのですが、3年くらい前から「その仕事ってPR会社で出来るんだ」って気づいた学生さんがPR業界に入ってきていますね。これは未来につながる非常にいい流れですよね。
あとは広告業界の就業人口がすごく多いし、すそ野も広いので、そこからの流入が大きいと思います。広告業界が再構築される中で、残念ながら仕事を失われ方だとか、改めて自分がやっていきたい領域はどこの会社で実現できるんだろうって立ち止まって考えた方が、「あ、PRか」って入っていらっしゃる。

山田:お隣さんといいますか、すごい近くにいたんだけど、改めて次自分が何やるかって考えてみたときに、PR会社に転職されてくる方ですね。
ネットのマーケティングに流れている部分もあると思うんですが、PR業界に入ってきているという流れもあるということですね。では、流出はどうでしょう?

本田:流出ということで言えば、前からあるのはPR会社からクライアントサイドの広報部門などに転職するということがよくありますね。ただ、これは大きく言うと同じだと思うので、そう考えるとあんまりないと思います。たぶん流出よりは流入の絶対量のほうが多いのではないでしょうか。

山田:流動性はどうですかね?

本田:流動性は相変わらずあるでしょうね。特に、外資系の事業会社のPR・広報はすごく行ったり来たりがあるんです。クライアントとエージェンシーをいったりきたりとか、エージェンシー間をホッピングするっていうアメリカ的な流動もあって。
これは今でいう広告領域における戦略PRというものとは無縁に、今も昔もあるよっていうことです。
だから、色んな流動っていうのが業界内でも起こっていると思いますけどね。

山田:これからのPRを考えて人材を育成していくという部分で、問題意識とか課題意識とかありますか?

本田:いやぁ…人材不足ですからねぇ。

山田:それは人の数の部分で?

本田:人の数も質も、ですかね。結局PRは人のビジネスじゃないですか。言い方悪いですけど、PR会社における人の採用って仕入れでもあると思うんですよ。だからものすごくいい素材を見つけて入ってもらう、ということも商品化と同じことですよね。どういう商品になってもらうかとか、それをどうクライアントさんに対して売り出すとか、全部一連の流れで、人材採用・人材育成・人材活用ということになって、これそのものがPRビジネスの「商流」だと思います。

山田:今の話ってプロのスポーツの世界でいうと、才能のある選手を入団させて、しっかり鍛えて、スタープレイヤーとして売り出して、お客を呼ぶということと一緒ですよね。基本PRってそういうビジネスなんじゃないですかね。均一な人材でサービスを量産するファクトリー型のビジネスモデルではなくて、むしろ少数のスタープレイヤーが業界をけん引するような球団型のビジネスモデルが大事じゃないかと思います。もちろん、バランスなんでしょうが、いまは後者の発想が少なすぎる気がします。「あの会社のあいつはすごいよね」とか。「あの成功例は素晴らしい」とか。PRについてそういう評判が盛り上がってくれば、もっと人材の質も量もあがってくると思うんですけど。そういう意識で人材採用・育成をする状況にはなっていないですよね。

本田:僕は、PRパーソンって野心家じゃないと駄目だと思っているんです。PR業界とは全然関係のない社長さんだったり、お医者さんだったりで世に出る人はやっぱり野心があるんです。で、そういう方はすごくPRがお上手なんですよね。
結局本当にこの業界の本質がわかって、「やりたい」「自分が活躍できる」と思うということは、野心がないと起こらないことだと思うんです。で突き詰めていくと、たぶんそこのエネルギーとかセンスとか推進力をクライアントさんが求めている気がするんですよ。

山田:なるほど。今ブルーカレントさんって何人くらいいらっしゃいますか?

本田:今35、6人だと思います。平均年齢は30強くらいかと。

山田:皆さん野心もっていらっしゃいますか?(笑)

本田:若いですし、そういう子が多いと思いますよ。女性も多くて。

山田:女性のほうが多いですか?

本田:女性7割ですね。

山田:やっぱり。多くのPR会社で女性優位な感じですね。

本田:面接で話していて「PRだと思ったんです!」ってガッとくるような子は、男性より女性のほうが多いですね。結局面接の時何を見るかって、僕たちが気に入るかどうかより、その人をクライアントの前に出したときに気に入られるかっていう視点がはいるじゃないですか。あとメディアの前で、クライアントさんの言いたいことを代理人として売り込んでこられるかっていう視点とか持ちますよね。面接の時にそれができそうだと感じるのは、今は女性の方が多いっていうのが正直な感想ですね。

山田:まぁ…若い時はね。だから新卒採用とか、若い人材の採用だと女性が多くなっちゃうんですよね。

本田:でも、PR業界でこれから男性の活躍どころってどんどん出てくると思うんですよ。やっぱり男性って仕組化とか、体系化とか、感覚的にやっていることをシステマティックにおとしたり、ちょっと俯瞰してみたり、ということがすごく上手ですよね。だから、PRという考え方がちょっと顕在化してきている今、これをまとめていって体系化していくことってことに関して、僕はすごく男性に期待しているんですよね。

山田:なるほど、男子がんばれ!ですね。
最後になるんですけど、うちとブルーカレントさんは競合と言えば競合じゃないですか。実際にはあんまり競合する機会はないですけど。いい意味で競合関係でありつつも、会社間の垣根を越えつつ、お互いに刺激になるようなことを是非やっていきたいですね。

本田:そうですね。藤田さんともお話したことがありますが、市場が小さいので競合だとかまだ言っている段階じゃないですよね。

山田:市場規模や企業規模の話だけでいうと、ブルーカレントさんもインテグレートもまだまだこれからじゃないですか。だから競合ということより、成功事例を世の中に見せて、優秀な人材を育てて、市場そのものを盛り上げていく方が大事ですよね。

本田:百倍大事ですね。まだまだ市場自体がひよっこですからね。

山田:30年も40年も前から、僕らの先輩たちが粘り強くPRをやってきたから、日本でもPRの市場と業界が出来上がってきたんだと思いますが、「本質」の理解という点ではまだ不十分と言わざるを得ない。

本田:そうですね。昔から業界はあるんですけど、潜在的に持っている力とか、お客さん側からの潜在的なニーズのポテンシャルでいうと全然まだですよっていう話ですね。
ソーシャルメディアも含め、環境が変わってきている中、活躍のしどころが増えてきているので、どこからどこまでを市場とみて、どこからどこまでをスコープとみるかっていうことを、今再認識すべきなのではないでかと思うんですよね。

山田:同感ですね。PRの発想やノウハウをどこに活かすのか。どんどん新しいチャレンジをして行きましょう。

<対談を終えて>

実は最近、あるイベントで本田さんとは対談をさせていただいたのですが、今回はしっかりとかなり本質的なお話ができたと思います。 実は僕も本田さんも、これまでは”PR業界”の活動には、正直、あまり積極的な方ではなかったと思います(すいません)。でも、人材や若手に対する想いや業界の発展について、かなり共通する問題意識をお持ちだということがわかりました。NEXT PRという視点で、お互いに「仕事」を通じて刺激し合えればと思いました。
本田さん、どうもありがとうございました。

本田 哲也

ゲスト・プロフィール

本田 哲也
ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役社長
1970年生まれ。戦略PRプランナー。セガの海外事業部を経て、99年、世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラード日本法人に入社。同社バイスプレジデントを経て、2006年より現職。国内外の大手メーカーなどを中心に戦略PRの実績多数。
主な著作に「影響力」(ダイヤモンド社)、「その1人が30万人を動かす!」(東洋経済新報社)、「戦略PR 空気を作る。世論で売る。」(アスキー新書)などがある。