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【The対談 Vol.03】
次世代のPRを語る (前篇)−ビジネスと対峙するPR

2010.08.11
第2回対談は、『戦略PR』の著者としても知られる、ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役社長 本田 哲也氏をお招きしました。弊社COO山田と”NEXT PR”をテーマに熱い論議が繰り広げられました。

本田 哲也

ブルーカレント・ジャパン株式会社
代表取締役社長

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山田 まさる

株式会社インテグレートCOO

【The対談 Vol.03】次世代のPRを語る (前篇)−ビジネスと対峙するPR

山田:PRと一括りで言っても、マーケティング、コーポレート、広報サポート、キャンペーンなど、いくつかのタイプがあると思うのですが、本田さんの頭の中では、どのように分類されていて、ブルーカレントさんはどの立ち位置だと考えていらっしゃいますか?
そもそも、他社がやっていることとブルーカレントさんがやっていることは、違うと思ってお仕事されていますか?

本田:まったく違うとは思っていないです。
弊社は元がフライシュマンヒラード(米国に本社を置く、世界最大規模のグローバルPR会社)なので、いわゆる総合PR代理店なわけです。
グローバル全体のことでいうと、フライシュマンには、85か所くらい世界中に拠点があって、3000人以上が働いています。その各地の会社が、地理的な「ロンドン」「ニューヨーク」「東京」という分け方の他に、プラクティスグループという手法で分けられていて、それが20以上あるんですよ。例えば、「BtoCマーケティンググループ」、「ヘルスケアグループ」、「企業広報グループ」、「政治グループ」、今だったら「デジタルグループ」もあります。

山田:アメリカのPR会社はそういう構造の会社が多いですよね。

本田:ブルーカレント前の僕のチームも、「BtoCのマーケティングプラクティスグループ」に属していました。その部門のスピンオフがブルーカレントなので、そう考えると日本の他の会社とも、大枠でいうと一緒ではないかと思います。

山田:グローバルだと、総合PR代理店の中に分野や手法で分けられたグループがあるという形がスタンダードじゃないですか。日本でそれがスタンダードにならないのは何でなんでしょう?アメリカのPR会社で、例えば「教育」をテーマにしているチームだと、元中学校の先生とか、教育委員会で働いていたような人がいたりするじゃないですか。「医療・ヘルスケア」でいうと医薬品メーカーで働いていた人がチーム内にいて、非常に専門性が高いですよね。

本田:そうですね。クライアントサイドからも、メディアサイドからも、FDAとかのお役所、日本でいう厚労省みたいなところからも、PR会社に入ってくる人がいますね。

山田:そう考えると日本は、PR会社だけの問題ではなく、広い意味でいうとパブリック・アフェアーズ(※公共的側面から見た企業広報。企業の社会的・公的責任を認識し、社会に対して積極的に貢献するために行う広報活動をいう。(大辞泉より))に対しての認識が薄いと言えるでしょうか。

本田:1個1個はあるんです。ロビイングに近いこともあるし、当然企業広報もあるし、でも全部個別のものとしてとらえられていて、それを全部含めてパブリックリレーションズっていう仕事だよね、領域だよねという認識がなかったんだと思います。

山田:そうですね。PRの問題というよりも、合意形成の仕方や物事の進め方そのものが問題なんでしょうね。
本田さんのように、グローバルの視点をお持ちの方から見て、これから日本もどんどん米国のようになっていくと思われますか?

本田:米国とまったく同じようにはならないかなと思っています。構造的なものとか、さっきおっしゃったように合意形成の仕組みだとか、色々な外的要因があるので。ただ、時間がかかったり、段階的ではあるかもしれないですけど、米国のような方向に向かっていくとは思います。

山田:なぜそう思われるんでしょうか?

本田:パブリックリレーションズという考え方や、専門性を持っている人が介入するということが、今まで社会の仕組みの中になさすぎたんだと思います。官庁にも、民間企業にも、個別にそういう動きはあるんですよ。だから、じわじわといくのではないかと。

山田:なるほど。

本田:ただ5年でアメリカのようになるかと言ったら、それは難しいと思いますけどね。

山田:では、そういう流れの中で、本田さん自身が意識されていることは何かありますか?

本田:やっぱりPRは本質的な活動だし、PRを考えることは企業にとっても本質を考えることだと思うんです。だから突き詰めて行くと、やっぱりビジネスだったらビジネス、その商品だったらその商品を本当に考えている中枢のところと仕事すべきだと思います。手法論としてのPRで依頼しますっていうことではなく、クライアントさんと一緒にビジネスの本質を考えていく、パートナーになっていく、ということを意識していきたいです。

山田:なるほど。それができるのがブルーカレントさんの強みということでしょうか?

本田:弊社の強みというか、お客さんとお話していて、そこを求められていると感じますね。ブレーンとして一緒に考えてほしいというのが一つのニーズだということを、現場にいて実感します。

山田:僕もそこはまったく同じ意見で、さっき本田さんがおっしゃったように、ビジネスの本質に近いところに入っていって対面で話をしていくということに意味があると思います。
一方でマーケティング以外の場面でも、手法論でなく、「PRの考え方って大事だね」ということが広まって、顕在化していくことが大事だと思うんです。どうしたらそういう状態になるんでしょうか?スタープレイヤーが沢山出てくるっていうことなんでしょうか。

本田:それはあると思います。
あとやっぱり成功例ですよね。マーケティングに限らずとも、今の10倍は世の中に出て行かないとだめですよね。

山田:どういう見え方になるかは別にして、世の中にとって意味のあるケーススタディがもっともっと出てこないといけないんでしょうね。そしてなおかつ、それが手法論ではなく、本質論でいかないといけない。

本田:そこの難しさはありますよね。この前終わったカンヌ国際広告祭なんかを見ていると、広告は「クリエイティブ」として見えて、分かりやすいのでうらやましいなと思います。

山田:今回、うちの藤田とか若手がカンヌに行ったんですけど、話を聞いていて感じるのは、相当ケーススタディの見せ方がうまいということです。今回のPR部門グランプリを取ったゲータレードなんかは、広告とかPRとか関係なくなっちゃっているんですよね。僕からするとキャンペーンの「作品性」のようなものを感じます。さっきも言った分かりやすさとか、顕在化していくっていう意味でいうと、すごく参考になりますね。

本田:PRは地味だし説明的だから難しいなとずっと思っているんですけど、これからは見せ方の工夫ということを意識して実践していかないといけないということですよね。
本来的にはPRはシナリオメイキングだと思いますし、映画を作っているようなものだと思っているんです。「こういう風に世の中がリアクションする」とか、「こういう行動が起きる」っていう未来を設計していくのがPRプランニングだし、仕掛けじゃないですか。だから、もっと映画的というか、ストーリーの面白さだと思うんですよね。映画の予告でよくできたトレーラーなんか面白いじゃないですか。だからそこで何が起こっていったかというのをうまく3分くらいでまとめていくとプレゼンとしていいんじゃないかなと思います。

山田:カンヌのようなアワードでは、そういうVTRが求められますよね。パワーポイントを使ったスライドで事例説明するだけじゃなくて、やっぱり世の中の人達に訴えていくためには、プレゼンのクオリティも大事ですね。

本田:PRのケーススタディって、見せ方によってはすごくおもしろくなる要素が沢山つまっていると思うんです。仕掛けとか仕組みのおもしろさって本質的には目からうろこで、一般的におもしろいはずなんですよね。
昔、「戦争広告代理店」っていう高木徹さんのボスニア紛争のお話があって、あれも「これぞPR!」って話じゃないですか。あのお話も、結局「あ、そういうことね」っていう仕掛けと仕組みで世論形成がされていたっていうことの驚きと眼からうろこで話題になって、ドキュメンタリーの賞も取ったわけですよね。
ああいうことだと思うんです。本質的にはみんな知りたいし、単純におもしろい。そういう事例が沢山世の中に出てくるといいですよね。

山田:PRという仕事の見せ方、その前提になる捉え方が重要ですね。

本田 哲也

ゲスト・プロフィール

本田 哲也
ブルーカレント・ジャパン株式会社 代表取締役社長
1970年生まれ。戦略PRプランナー。セガの海外事業部を経て、99年、世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラード日本法人に入社。同社バイスプレジデントを経て、2006年より現職。国内外の大手メーカーなどを中心に戦略PRの実績多数。
主な著作に「影響力」(ダイヤモンド社)、「その1人が30万人を動かす!」(東洋経済新報社)、「戦略PR 空気を作る。世論で売る。」(アスキー新書)などがある。