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【The対談 Vol.01】
マスメディアとCGMを巡って

2009.11.20
記念すべき第1回対談は、株式会社トリプルセブン・インタラクティブ代表取締役 福田敏也氏をお招きしました。前編となる今月は、「マスメディアとインターネット」をテーマに、マーケティングの未来についてお話を伺います。

福田 敏也

株式会社トリプルセブン・インタラクティブ 代表取締役

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藤田 康人

株式会社インテグレート 代表取締役 CEO

【The対談 Vol.01】 マスメディアとCGMを巡って

藤田:インターネットが普及した昨今、マスメディアはダメだ、だからネットだ、モバイルだ、という風潮が巷に溢れていますよね。今、現実以上にマスの凋落が強調され、ネット化の方向に進んでいるということへ、現場でマーケティングに携わる私はものすごく違和感を覚えるのですが、いかがでしょうか?

福田:私は元々広告会社にいてマスのクリエイティブをやっていた人間なので、テレビCMが世の中とどう関係するのかということは、長いこと考え続けていました。
「テレビはダメになった」とか、「みんながテレビを見なくなった」とか言われていますけれど、やはり世の中の空気をつくるには、今でもテレビCMが果たしているパワーは圧倒的だと思います。マスによって世の中の空気を作るということと、インターネットのような人に近いメディアの中で考えうること・有効なことというものを、統合的に考えるということが大事なのだと思います。「マス一辺倒じゃなくてさ…」というネガティブな話ではなくて、「マスって本当に凄いから、インターネットや、リアルな店舗に近い話も含めた、より具体的なソリューションと共に解決策になっていったら、もっと凄いよね」というポジティブな文脈に置き換わることの重要さというのが、個人的にはすごく意識しているテーマですね。

藤田:なるほど。ネットマーケッターは、福田さんように以前マス広告のクリエイティブをやられていて、マスのことを十分理解された上でインターネットについてお話される方と、マスの絶頂期を知らずにマス否定から入って、ネット原理主義みたいになっていらっしゃる方と、バランスからいうと圧倒的に後者の人たちが若くて声が大きい。そうすると本当のコミュニケーション環境が相当歪められて、だんだん世の中でデフォルト化している気がしてならないのですが、どう感じられますか?

福田:世のブログに日々書かれている記事の9割以上はマスをソースにした情報の再生産だという話があります。また、ニュースのソースにしても、結局Yahoo!のニュースや携帯のニュースで見ているものの多くは、朝日新聞や時事通信、読売新聞などの、新聞社系のニュースソースからの配信記事だったりする。新聞紙面という形態の中での広告は入りにくくなっているのかもしれませんが、ニュースソースとしての新聞やマスメディアの重要性は上がっていると言えると思います。

藤田:実は我々も、積極的にブロガープロモーションを手掛けていた時期があったのですが、それによって生まれるものに限界があったことと、費用対効率が決していいものではなかった。また、意図を持って口コミを書かせようとしたり、操作をしようとした瞬間に、明らかにそのコンテンツのクオリティが下がってしまって、結局本来の商品価値を伝えるというミッションを果たせなかったのです。そこで、CGMをダイレクトにコントロールしようとするのはやめて、優良な情報を新聞・テレビ・雑誌などのメディアにマッチアップしていきながら仕掛けていって、結局それによって自然に発生する口コミをどう増幅するかというところに終始しようと、マーケティングを変えていったんですね。そのほうが非常に優良なCGMが沢山発生しましたし、CGM一本足打法をやる必要もなくなったので、結果的に効率がよくなっている気がするんですよ。ただ一方で、まだ皆さん諦めずにCGMやSNSに介入して操作しようとされている気がするのですが、無理だと思っているのは我々だけで、まだやりようがあるのでしょうか?実際どう思われますか?

福田:CGMにしてもSNSにしても、そのことの存在する意味というのは大きくあり続けていると思うので、それがマーケティングとか、広告コミュニケーションとどう関係できるのかという話だと思います。
おっしゃる通り、ブロガーの方々に対し情報を提供して、取材のようなことをしていただくことの効果には限界があると思います。その方々はブロガーであって記者ではないので、結果としてブログに書かれる内容は個人差のない紹介文になってしまうことも多々ある。本当の意味で商品理解、ブランドの価値を高めることに繋がるかどうか。そこは冷静に考えるべきだと思います。
ただ、一方的に「書いてくれよ」と頼むのではなく、思わず突っ込みたくなるソースを作って、「あなたにとってもおもしろいし、私たちにとってもおもしろいよね」というwin-winの関係を考えるということでしたら、まだ芽はある気はします。

藤田:ネットにおいて人に伝えたいと思う気持ちがどこからくるかと言うと、自分の通常の生活領域にない、変なことだったり、面白いことだったり、ネガティブなことだったりという情報を得た時だと思うんです。でもそれは商品の特性や価値など、世の中に伝えたいこととは別の次元じゃないですか。その結果、ネガティブ方向・リスクの方向に話題が進んでしまうか、そうでなくても製品の伝えたいメッセージから遠くなっていってしまうことが多いように思います。
その現状を考えた時に、我々がマーケティングコミュニケーションで伝えたいことを直接的に伝える手段としてあまり効率がいいとは思えなくなっているんです。

福田:なるほど。

藤田:もう一点、日本のネット環境というのが、果たしてグローバルスタンダードと比べてどうなのか、ということもあります。やはりmixiとfacebookの違いはすごくあると思っていて、私はビジネスインフラ・マーケティングインフラとして、匿名性のネットは使えないと思っているんですね。匿名性だとどうしても無責任な発言をしやすく、リスク方向に振れてしまいがちですよね。facebookは実名性なので、本名を宣言している段階でそんなに人を攻撃したり、変なことをしたりもできない。ところが日本の場合、CGMに関しては圧倒的に匿名性じゃないですか。そんな怪しげなところに、大事な製品の情報を投げるというのは、ちょっと怖すぎると思うんですよ。いかがでしょうか?

福田:その通りだと思います。
ただ、もう一方で世の中にはブランドファンという方々がいて、自分がそのブランドのファンであるということを宣言することに価値を感じている人達がいる。そういう人達に対して、「ブランディングのために一緒におもしろいことしない?」と呼び掛けて、ブランドファンをつないでいく、という意味での企業コミュニケーションの在り方みたいなことはありえる気がします。

藤田:そうだとすると、私は今のいわゆるCGMプロモーションは、やはり実力以上に期待されすぎているのかなと思います。
これは僕のDNAがマスマーケッターだからかもしれないですね。インターネットにおけるマス性はどこまでリーチできるんだと思ってしまうんです。例えば、車とか不動産のような高額物件は、それで30人の人がコンバージョンできたらいい世界なので、いいかもしれないですよね。ただ、例えば100万本売らなきゃいけない飲料などの場合、リーチ効率を考えたときに、本当にそれはコアな戦略になりえるの?という壁にどうしてもぶつかってしまうんですよね。

福田:コミュニケーションの全体像の中で、CGMがマスを代替するということはたぶんないと思うんです。コアな部分を伝えたり、世の中の空気を作っていくには、ただ単純にCMという意味ではなく、藤田さんがやっている、番組も含めたメディア全体を通じて情報が出ていくということをどうマネージメントをどうするのか、それがベースであるような気がしますよね。

福田 敏也

ゲスト・プロフィール

福田 敏也
1982年、博報堂入社とともに制作局に配属。CMプランナーとして数多くの国内企業のCM制作及びキャンペーン設計にたずさわったのち、1995年博報堂電脳体設立とともにネットクリエイティブの世界へ。2003年独立し、トリプルセブン・インタラクティブをスタート。以降、多数の広告主の多種多様なコミュニケーション活動を企画・設計している。カンヌ国際広告祭金賞、NY Oneshow金賞ほか、国内外広告賞受賞多数。多摩美術大学、武蔵野美術大学で講師を務めるなど、後進の指導にも積極的に取り組んでいる。