Event Report イベントレポート

イベントレポート 2010.08.11

カンヌ国際広告祭 2010 レポート

代表の藤田を含めた3人で、6月に開催されたカンヌ国際広告祭へ視察に行ってきました。今回は、そこで得たこと・感じたことを中心に綴っていこうと思います。

市川 航介

株式会社インテグレート

市川 航介

カンヌ国際広告祭 2010 レポート
2010.08.11

代表の藤田を含めた3人で、6月に開催されたカンヌ国際広告祭へ視察に行ってきました。
今回は、そこで得たこと・感じたことを中心に綴っていこうと思います。

<カンヌ国際広告祭とは?>

カンヌ国際広告祭は、 世界3大広告賞の一つといわれる広告賞です。
正式名称は「International Advertising Festival」、通称カンヌ・ライオンと呼ばれています。
当初はフィルム部門のみからスタートし、昨年からはPR部門も用意されました。

<会場の雰囲気>

カンヌ映画祭と同じ会場で行われる広告祭は、想像以上にラフな雰囲気が漂っていました。スーツを着ている人はほとんどいません。Tシャツに短パン、という格好の人も多くいました。会場のすぐ横はビーチ。朝から砂浜で日光浴をしている人も多く、改めてリゾート地であることを感じる光景でした。

会場内では、各部門のショートリスト(一次選考)に選ばれた作品の概要がずらっと展示されていて、これらを見ているだけでも飽きずに一日経ってしまいそうです。
そして、朝の9時から協賛企業によるセミナーが開かれます。今年は、Facebook、Google、Yahoo、Go Viral、MO FILM、Hill&Knowlton などのセミナーがあり、あっという間に一日が過ぎ去っていきます。

セミナーが17時くらいには終了し、18時過ぎからはアワードの表彰式が開催されます。(アワード会場に入るために、あの赤絨毯を通ります!)受賞作品はwebサイトでも見ることはできますが、現地で会場の反応を体感する、という経験は貴重なものだと思いました。やはり受賞作品の中でも、特に会場が沸き上がるものがあり、文化や言葉の壁を越えて共感される「普遍性」の必要性を強く感じました。

(写真1)
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(写真2)
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<雑感>

以下、受賞作品及び現地セミナーを通じて感じたこと・見えてきた傾向を、いくつかのポイントに分けて記していきます。

①動画コンテンツの台頭

世界的にインターネット環境のインフラが整ってきており、動画コンテンツを視聴する環境が当たり前のように整ってきています。動画は、静止画やテキストに比べて、伝えることの情報量が圧倒的に多く、かつ言語や文化の壁も簡単に越えることができるコミュニケーションツールです。現地では、多くの動画コンテンツに触れる機会があり、このコミュニケーションツールを使わないのは勿体無い、と強く感じました。
例)「THE FUN THEORY」、「CHOOSE A DIFFERENT ENDING」

②テクノロジーが広げるコミュニケーションの可能性

センサー機能を使ったデジタルサイネージや、Youtubeの新機能、そしてiPhoneアプリでのAR技術など、その時の最新テクノロジーを用いることで生活者に「今までにない新しい体験」を提供することが可能になります。「新しければいい」、というわけではありませんが、「新しいことを知っていること」はコミュニケーションプランニングを行っていく上では欠かせないでしょう。それだけ可能性は広がるのですから。
例)「INTERACTIVE CATALOGUE」

③OutdoorとPRの親和性

現地で見たOutdoor受賞作品の多くに、心が動かされました。もちろん私自身は現場で見た(体験した)わけではありませんが、ダイレクト性という面ではOutdoorメディアというのは非常に有効なコミュニケーション手段だと思います。そして、そこにPR要素を付加することで、情報の広がりを生むことができます。更に、そこに最新テクノロジーの要素を加えることで、新しいユーザー体験とweb上でのシェアまでワンストップで可能になるのでは、と考えています。機会があればチャレンジしたい部分です。
例)「INTERACTIVE STOREFRONTS」

④online ⇔ offline

サイバー部門での受賞作やその他でも同様ですが、online上だけで完結しているものは少ない、と感じました。offlineで起きていることが onlineを通じて表現豊かになったり、onlineを通じて自身が行った行動がofflineに反映される、といった仕組みを作ることで、ユーザーの心を刺激し、共感や伝達を生んでいます。「webを使ったキャンペーン」というと、どうしてもweb内で完結させてしまいがちですが、これからは【offlineとどう連携し、offlineにどう反映させるか】の視点を加えたプランニングが不可欠になってくるでしょう。
例)「SAMSUNG SHAKEDOWN」、「SOUNDS OF HAMBURG」、「LIVESTRONG」

⑤ソーシャルメディアの利用が当然 = 生活者をしっかりと見据えたプランニング

「ソーシャルメディアを、一つのツールやチャネルとして使うことは当然」という全体の流れが感じられました。正しく言い換えると、「生活者にダイレクトに情報を届けるために、ソーシャルメディアというチャネルを使う」ことが前提として存在し、結果的にその仕掛けや取り組みが話題になり、マスメディアへと広がっていく。つまり、情報を届ける先に明確に生活者を見据えているということです。こういう情報設計が当たり前のように行われているのです。この部分については、日本のPR業界はまだまだ遅れているというのが現状ではないかと感じます。どうしても「メディアにどうアウトプットするか」の発想に陥りがちですが、それでは、根本的な解決にはならないでしょう。
例)「SNOWMEN AGAINST GLOBAL WARMING」

⑥普遍性

各部門の受賞作品を見ていて、「普遍性」というものの存在を強く感じました。言語や文化の壁を越えて、多くの人が共感できるコンテンツやストーリー。人が持つ原始的な感情や体を動かす感覚。コミュニケーションプランニングを行っていくにあたって、そういった根源的な要素の必要性を痛感しました。一言で言い換えると、「コミュニケーションのユニバーサルデザイン化」です。「グランプリを取る」という視点から見ても、各国から審査員が集まる以上、万国共通で理解できる感覚は必須です。
例)「BABY ELEPHANT」

⑦ストーリー性

この要素が、今回の視察で最も際立って感じられたもので、上記に挙げた「普遍性」ともつながる部分です。型にはまった「起承転結」の文脈を飛び越えたストーリー性。見ている人/関わっている人の心を震えさせるストーリー(感動、喜び、驚き、悲しみ、怒り etc.)。PRに携わっている人は特に、「どんな文脈で落としこんでいくか」といったことを考える機会が多いかと思います。もちろん、ターゲットのパーセプションを変化させようとするためのアプローチとしては正しいのですが、一方で、文脈を超えたエモーショナルなストーリーが持つ、強大なパワーを意識することも必要です。人の心を動かすには、人の心に直に働きかける、という基本的なところに立ち戻る必要があると思います。
例)「AUDITORIUM FOOTBALL」、「REPLAY」

(図1)
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<総括>

今年のPR部門は、全部門で唯一「ブロンズ」受賞作品が0という結果でした。理由としては、そもそものエントリー作品が少なく、受賞レベルに達するものも少なかったから。言い換えると、エントリーすればチャンスも大きいということです。
来年以降、日本から多くの作品がエントリーされ、「グランプリ」や「ゴールド」に選ばれる、という光景が当たり前のようになれば、日本のPR業界ももっと盛り上がるのではないか、と強く感じています。